龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
頭の中で誰かの声がする


『大人の邪魔をするんじゃない』

『あんたはいらない子なのよ』

『あんたなんていなくなればいいのよ』

『誰もあんたを愛さない』


違う 違う 違う

あれは誰の声?



怖い 助けてママ


膝を抱えて小さくなる


「どうしたの? だいじょうぶ?」

優しい声がして顔を上げると、看護師さんがわたしの前にしゃがんでいた。

「気分が悪いの。吐きそう」

よかった、ここは病院だった。

具合が悪くなっても看護師さんはお仕事だからわたしを助けてくれる。

迷惑だなんて思わない。

「どこか痛い?」

「いいえ、雷が怖いんです。いつも気分が悪くなるの」


この子、羽竜さんのところの――

別の誰かの声がする。


ダメ

圭吾さんは忙しいの


『悪い子は雷様に連れて行かれるのよ』


わたしは悪い子なんかじゃない


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