龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
4
退院の日
最後の診察を終えて帰り支度をしていると、意外な人の訪問を受けた。
「初音さん?」
「こんにちは。ちょっとお話できる?」
「どうぞ」
初音さんは病室に入って来て辺りを見回した。
「いつも一緒にいる男性は?」
「圭吾さん? 今、退院の手続きに行ってます。どうぞ座って」
「よかった。あの方、苦手なの。かなり霊的なパワーの強い方だから、そばにいると疲れてしまって」
ふうん そういうものなんだ
「東京に帰る前に、助けてもらったお礼をあなたに言いたかったの。ありがとうございました」
初音さんは頭を下げた。
「どういたしまして。でも、本当にこれでよかったんですか?」
「タローの事ね」
「タローって呼んでたんですか?」
「昔飼ってた犬の名前なの」
初音さんは懐かしむように微笑んだ。
「名前をくれたらわたしを守ってくれるって言ったわ。まだ子供だったから他に思いつかなくて――そうね、タローと一緒に消えてしまいたかった気持ちもたしかにあるわ」
最後の診察を終えて帰り支度をしていると、意外な人の訪問を受けた。
「初音さん?」
「こんにちは。ちょっとお話できる?」
「どうぞ」
初音さんは病室に入って来て辺りを見回した。
「いつも一緒にいる男性は?」
「圭吾さん? 今、退院の手続きに行ってます。どうぞ座って」
「よかった。あの方、苦手なの。かなり霊的なパワーの強い方だから、そばにいると疲れてしまって」
ふうん そういうものなんだ
「東京に帰る前に、助けてもらったお礼をあなたに言いたかったの。ありがとうございました」
初音さんは頭を下げた。
「どういたしまして。でも、本当にこれでよかったんですか?」
「タローの事ね」
「タローって呼んでたんですか?」
「昔飼ってた犬の名前なの」
初音さんは懐かしむように微笑んだ。
「名前をくれたらわたしを守ってくれるって言ったわ。まだ子供だったから他に思いつかなくて――そうね、タローと一緒に消えてしまいたかった気持ちもたしかにあるわ」