龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】

退院の日

最後の診察を終えて帰り支度をしていると、意外な人の訪問を受けた。


「初音さん?」

「こんにちは。ちょっとお話できる?」

「どうぞ」


初音さんは病室に入って来て辺りを見回した。


「いつも一緒にいる男性は?」

「圭吾さん? 今、退院の手続きに行ってます。どうぞ座って」

「よかった。あの方、苦手なの。かなり霊的なパワーの強い方だから、そばにいると疲れてしまって」


ふうん そういうものなんだ


「東京に帰る前に、助けてもらったお礼をあなたに言いたかったの。ありがとうございました」


初音さんは頭を下げた。


「どういたしまして。でも、本当にこれでよかったんですか?」


「タローの事ね」


「タローって呼んでたんですか?」


「昔飼ってた犬の名前なの」

初音さんは懐かしむように微笑んだ。

「名前をくれたらわたしを守ってくれるって言ったわ。まだ子供だったから他に思いつかなくて――そうね、タローと一緒に消えてしまいたかった気持ちもたしかにあるわ」

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