龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
「しづ姫の『ちょっと』って本当にちょっとだからな」

悟くんは笑った。

「でも、前より自信持ったみたいに見える」


「圭吾さんがわたしを愛してるってよく分かったから」

「今さら? 僕はずっと前から分かってたよ」

「そうなの?」

「そりゃそうさ。あんな圭吾は今まで見たことないもの」

「優月さんと付き合ってた時も?」

「なんだ。優月のこと気にしてたの?」

「気にするわよ。あんなに綺麗なんだもの」

「まあ美人だね。あの時はあの時で圭吾も真剣だったと思うよ。でも、今は君に夢中だ」

「悟くんは優しいのね」

「僕を信じろ。本当だから」


それから、わたしと悟くんは残りの休み中に美幸と亜由美を誘って遊ぶ計画を立てた。

二人でケラケラ笑っていると、螺旋階段を下りて圭吾さんがやって来た。


「僕より悟の方がよっぽど兄妹っぽいじゃないか」

圭吾さんが言った。


「うらやましいだろ」

悟くんが軽口をたたく。


「『兄貴』なら、うらやましくはないね」

「僕としづ姫は気が合うんだよ。ひょっとして生き別れの双子ってことはないよね」

「ないね。お前の家は男しか生まれないんだから」

「そうなんだよな――さてと、圭吾も戻ってきたから僕はもう行くよ」

悟くんは立ち上がった。


「コーラごちそうさま。ああそれと圭吾、右手の怪我お大事に」


「失せろ」

圭吾さんが笑って言った。
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