龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
3
和子さんが浴衣を着せてくれた。
浴衣なんて何年ぶり?
ううん
たぶんママが亡くなってから初めて
しかも既製品じゃなくて、彩名さんに連れて行ってもらって呉服屋さんで仕立てた物。
上から下まで一セット揃えたらびっくりするような金額になった。
彩名さんは
「いいのよ、どうせ圭吾が払うんだから」
って言った。
圭吾さんに買ってもらうってのも気が引けるんだけどな
でも、憧れのキレイな浴衣はとっても嬉しい
「志鶴さま、もう少しじっとしていて下さいまし」
和子さんがお小言を言ってからフッと笑った。
「芙美子さま――お母さまもじっとしていられない方でしたけれど」
そうか、和子さんはママと貴子伯母さまの乳母だったんだっけ
「ママも和子さんに浴衣着せてもらった?」
「ええ、何回もお着せしましたよ」
「そっか、和子さんに着せてもらってなんか嬉しい」
「わたくしも嬉しゅうございます――さあ、できました。圭吾さまに見せておあげなさいまし」
走り出したい気持ちを抑えて居間に行くと、圭吾さんはにっこり笑った。
「かわいいね」
それだけ?
どうせわたしは『かわいい』が精一杯よ
浴衣なんて何年ぶり?
ううん
たぶんママが亡くなってから初めて
しかも既製品じゃなくて、彩名さんに連れて行ってもらって呉服屋さんで仕立てた物。
上から下まで一セット揃えたらびっくりするような金額になった。
彩名さんは
「いいのよ、どうせ圭吾が払うんだから」
って言った。
圭吾さんに買ってもらうってのも気が引けるんだけどな
でも、憧れのキレイな浴衣はとっても嬉しい
「志鶴さま、もう少しじっとしていて下さいまし」
和子さんがお小言を言ってからフッと笑った。
「芙美子さま――お母さまもじっとしていられない方でしたけれど」
そうか、和子さんはママと貴子伯母さまの乳母だったんだっけ
「ママも和子さんに浴衣着せてもらった?」
「ええ、何回もお着せしましたよ」
「そっか、和子さんに着せてもらってなんか嬉しい」
「わたくしも嬉しゅうございます――さあ、できました。圭吾さまに見せておあげなさいまし」
走り出したい気持ちを抑えて居間に行くと、圭吾さんはにっこり笑った。
「かわいいね」
それだけ?
どうせわたしは『かわいい』が精一杯よ