霊務・ザ・ファイナル(霊務4)
傷だらけで、いつ消滅してもおかしくない状態ではあるが、黄鬼は地面から何とか起き上がった。
虫の息の状態。
しかし、チャンスが巡ってきたと顔をニヤつかせる。
「フ……フフ……攻撃出来る霊は、これで1人も居なくなったね……ゲホッ。退散する前に、せめて一匹くらいは仕留めていくわ!」
血だらけのまま悪魔の形相で襲いかかって来るので、オッサンはヒイっと目を瞑った。
すると不意に隣に居た礼子は、何の前置きもなく立ち上がった。
「うっさいよ、このドブス」
バチコーーン!!
笑顔のまま、黄鬼をビンタ。
この程度の攻撃にも吹っ飛び、敵のダメージはもう限界。
オッサンは驚き、礼子に確かめた。
「礼子君、いいの? お姉ちゃん怖いって、さっきまでビビってたのに」
「はえ? オッサンボケた? お姉ちゃん何ていないよアタシ」
それを聞くと、黄鬼は歯を食いしばる。
「キー! 私の幻術が切れたか……流石にもう相手にしてらんないわ!」
ここは潮時だと観念した黄鬼は、そのまま森の奥へと逃げていった……
辺りは静寂が訪れる。
見事、大勝利だ。
しかし、勝利を収めた気持ちより、何か肩透かしをくらったような気分である。
「何だ……礼子君の姉と見せたのは嘘だったのか。通りで霊力がこの子みたいに、化け物地味でないわけだ」
狐に化かされた……と言ったとこだろう