霊務・ザ・ファイナル(霊務4)
第10死-人間
しかし、今の全員の傷からしてソイツらにケンカ売るのも無防備ってもの。
特に礼子は、一度サキとの勝負に負けている。
眠り猫の力を借りても氷との相性が悪いので、勝てる見込が非常に薄い。
どうしたもんか……
「とりあえず傷を治すニャ」
「どうやって? 供え物でもエネルギーをもらうのかね? 無理だよ何もないこんなとこで」
オッサンの言う通り、戻って民家に立ち寄る時間はない。
すると、眠り猫は礼子の傷を舐め始めた。
「え? 何? キャハハ! くすぐったいよ~!!」
舌がザラザラ、いい感触。
何か快感を覚えようとするかと思ったら、傷が癒えるではないか。
「昔からあるガマの油と言う治癒薬が、我が輩の舌に塗られてるニャ。これで多少の傷が癒える」
本当だ。
腹に開いたデカい風穴は別として、細かい傷が消えている。
オッサンはそれを見て、バカなと驚く。
ガマの油と言っても、それはあくまで人間界のもの。
それを塗っても、そこまで霊体が癒えるハズはない。
これはもしや、知らず内の眠り猫の特殊能力か……?
それは誰にも分からなかった