霊務・ザ・ファイナル(霊務4)
「んも~~何忘れたのこの子は。筆箱? お弁当? 全くおっちょこちょい何だから。お父さんも新聞読んでないで何か言ってくださいよ」
「ん……おお。まあいいじゃないか母さん。眠り猫に強く当たり過ぎだ」
いつまでやるんだ、このやりとり。
本当珍しくオッサンもやり続けるし。
それをよそに、眠り猫はポリポリと頬を掻いた。
「それがニャ……その~~……家康様に戻っていいって言われたんニャ」
「まっ。出戻り! 父さん大変よ! この子出戻ったわよ! もう~~ご近所さんに何て説明すればいいのかしら」
「もういいから礼子君。……眠り猫君。家康公がそんな事を?」
オッサンは飽きたので、まともに話しかけた。
「ウム。我が輩はお前達と離れるのが寂しいと見透かされてな。家康様の魂はもうないが、家康様の墓には亡骸があるから、それをお護りするよう命ぜられたニャ」
それに、もう一つ。
長年400年も護ってきたので、たまには自由にしろと言われた眠り猫。
そこまで守護する必要はないとの事なので、これからはずっとこの眠り猫の門にいなくても良い。
気ままに世界を見て来いと、家康からの最後の褒美でもあった。
とにかく、帰ってきたと言う話なのだ。
話をよく聞いてなかったが、戻ったは戻ったなので細かい事は考えず礼子は喜んだ。
「良かった! また遊べるねん! これからもよろしくね出戻り猫!」
「眠り猫だから礼子君」
オッサンの一言で、この旅の幕は閉じたのだった……