霊務・ザ・ファイナル(霊務4)
第5死-三鬼
ハアハアハア……
随分遠くまで来たもんだ。
山の草原地帯まで追い掛け、夜とはいえ障害物もないこの広い場所は、月の光でよく見渡せる。
そのおかげか、ようやく黒ガラスの姿を発見した。
「待て! もう逃がさないぞ!」
東照宮を離れ、眠り猫のスピードも徐々に戻っている。
これなら何とかなるか?
それも、相手は分かっているようだ。
「やれやれ……使うつもりはなかったが、見せてやろう我が特殊能力を」
特殊能力!?
オッサンはその言葉を知らない眠り猫に、そっとアドバイスを聞かせた。
「注意するんだ。霊の特殊能力ってのは様々な技がある。家康公の虎の術の『虎砲』ってヤツもそうだし、中には炎や氷を扱うのも居る」
「そうか……まあ、我が輩は負けないよ。キャット、一瞬にして勝負がつくニャ」
きっと一瞬にして……と言いたかったのか?
そんな無理して猫語を使わなくても……
お互いが対峙し、風が草原の草を奏でる。
先に動いたのは、黒ガラスだった。
「見よ! これが特殊能力だ!!」