今、この場所で。
「起きてる〜?ヒロ〜?」

一階のリビングから母親が俺のことを呼んでいる。


適当に返事を済ました俺は今日は確か数学の小テストがあったなと思いつつ呑気に制服に着替える。


自分の部屋からドタドタと勢いよく階段を下った俺は母さんのいるリビングには向かわず真っ先に玄関に向かった。


「母さん、今日俺早く学校に行かないといけないからもう行くよ。」


嘘だ。
別に日直でもないし、部活にも所属していないから朝練でもない。


「いってきます」と俺が振り返るとさっきまでリビングにいた母さんが目の前に立っていた。
笑顔で見送る母。


どこまでもこの人は母親として完璧な人だと思った。

だから、せっかく作った朝ご飯を食べなかったことにちょっと罪悪感を感じた。

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