彼女の嘘は真実で
彼女
「私、黒い犬を飼っているの。」そう言った彼女が見せてきたものは、
誰がどう見ても白い猫だった。
「ねっ?かわいいでしょう?
クロって名前なの。」
白いのに『クロ』。
それはそれは、その猫も可哀想に…。
どうせならクロも『シロ』のほうがよかっただろう。
「いい子だね〜、クロ。よしよし。」
しかしクロは、その変わった名前など気にすることはない様子で、彼女に頭をなでられている。
「な゛〜〜」
クロは一声鳴いた後、彼女の腕から飛び降りた。
名前とは正反対の白い毛並みをなびかせながら。