あきれるくらい側にいて
足が重たかった。
でもタクシーを拾う気のもなれなくて歩いた。
引き返し、ただ自分のマンションに向かって歩いていた。
タダシの素っ気ない性格なんて前からわかってたこと。
あの居酒屋やアパートまで行ったのだって、一時の気の迷いだし。
そう何度も、心の中で自分に言い聞かせた。
でも、やっぱり惨めで虚しくて苦しくて。
体だけじゃなく心まで重くって……あたし ――。
「サクラさん?」
聞きなれたその声に、足を止めた。
そして顔を上げる。
「ハル…」
そこには笑顔があった。
仔犬みたいに人懐っこそうなクルクルな瞳が、あたしを見てた。