あきれるくらい側にいて
 
そして左手で足元を指した。


「……?」


何かがあるのはわかるけど、暗くてよく見えない。だからその場に屈んだ。

遅れて隣に並んだハルがポケットを探っている。

間もなく取り出したのは、小さなマッチ箱。

暗い空間に細い指先が浮かびあがり、マッチの先に小さな火が灯された。

目の前には花や小石で飾られた、たぶんケーキのつもりの砂山。
上にはカラフルなロウソクまで立っている。

そこへハルが手を近づけるけれど、火は風に吹かれすぐに消えてしまう。

それを真顔で何度も繰り返すハル。


「ちょっと貸してっ」


じれったくなって、あたしはマッチ箱を奪った。

スッと音を立てて擦られたマッチ棒をゆっくりと移動させると、ハルの手が伸びてきてあたしの手を取り囲んだ。

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