あきれるくらい側にいて

「……2、1」


携帯の時計表示をこっちに向けてハルが笑う。


「お誕生日おめでとうございます」

「……」

「サクラさんに“ハッピーバースデー”を言うトップバッターになりたくて」


そう言って笑った顔は、不純な物なんて1%も混ざってないと言い切れるくらいに澄んでいる。

そしてあたしは、いつの間にか目元に熱を帯びていた。きっと今なら一度の瞬きで零れ落ちてしまう。

だから無言のまま目の前のロウソクを吹き消した。だって、泣きそうになってるなんて知られたくなかったから。


「それからこれは、プレゼントです」

と、ゴソゴソと小さな袋を取り出したハル。


「キミのポケットはどんだけ詰まってるのよ?」

そんなことを言ったのは照れ隠しのため。まさかプレゼントまで用意してるなんて想定外過ぎて。


「いいから開けてくださいよ?」

促されてリボンを解いた。


「これは、douceur(ドゥスール)の美容液…」


中に入っていたのは、まだ製作中の化粧品のひとつで。

でもパッケージが違っている。

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