あきれるくらい側にいて
 
「……」

「サクラさん?」

「な、泣いてなんてないしっ!」


そう言って、あたしはプイッとそっぽを向いた。

そしたら隣のハルが「そうですか」と静かになって、それから急に立ち上がり、普段の彼らしい明るい口調で言ったんだ。


「じゃ、行きましょうか? マンションまで送りますよ」

「え」


拍子抜けっていうより、落胆っていうか……とにかく、その一瞬で胸が一気にざわめいた。

だって、さっき会ったばかりなのに。
どうして、もう帰るなんて言うの?
まだ話していようよ。

もっと一緒にいようよ……?


こんなこと思うのは、一時の気の迷いか、それともアルコールのせいなのか? それは自分でもわからなくて。

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