あきれるくらい側にいて
 
「ホントは春から地元の大学に通う予定でした。無事に第一志望の大学に合格して、卒業式が終わったら、友達と卒業旅行に行く計画もしてたんですけど…」


と一旦そこで話を区切り、少しの間と一呼吸の後でハルはポツリと吐いた。


「オレだけ行けなくなりました。
……旅行も大学も」


表情を曇らせるわけでもなく、ただちょっと困ったように笑った。

そんな横顔に胸がキュッとする。


「家族で夕飯を食べていた時に、父親から『大事な話がある』って切りだされて……。
それまで笑い合って和んでたんで“離婚する”なんて言われた時は、すぐに意味が理解できませんでした」


そう続けてから、ハハッなんて乾いた笑い声を漏らした。

だけどあたしは返す言葉が見つからなくて、ただ目の前の彼を黙って見つめるしかなかった。

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