あきれるくらい側にいて
 
ハルの指先が額や頬の上をクルクルと踊るたび、あたしの鼓動は速まっていった。

だけど心は波立っているのに体からは力が抜けていき、普通じゃない状態だった。

いまって何時なんだろ?
もしかしたら、そろそろ空が白み始める頃かも……。


突然襲ってきた睡魔は、アルコールのせいもあったかもしれない。

ドキドキと高鳴っていた胸は、次第におとなしくなっていき。

ぼんやりと見つめていた目の前の顔も、狭まる視界によって小さくなって……そして見えなくなった。


「サクラさん?」


あたしの名を呼ぶ声が心地良かった。

愛おしささえ感じてしまうほど、安らぎを感じていた。


だから

微かに感じた唇の温もりも何かはわからなかったけど、ただ素直に受け入れたんだ。



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