あきれるくらい側にいて
……でも。
「アタシはね、」
静かにモモちゃんが口を開く。
「結婚するからには幸せになってもらいたいと思う。それはウメもアタシも同じよ。幸せの価値観って人それぞれ違うだろうけど、どんな深い愛情があっても一文無しでは生活していけない。だからお金は必要。
でも、苦楽を共にして一緒に生きていくには、やっぱり…」
「やっぱり?」
「ねぇ、サクラ?
アンタ、あの堅物男のこと、ちゃんと好きなの?」
いつになくモモちゃんの表情は真剣だった。
「職業や将来、いろんなことを抜きしても、純粋に自分で好きになった相手なのかって思ってね。
本当に好きな人か? ってことよ」
あたしの返事は待たずに、立ち上がりキッチンの中へ入っていったモモちゃん。
部屋の中には、モモちゃんが食器を洗う音とウメちゃんの小さな寝息が協和していて。
あたしは胸の中で、さっきモモちゃんに言われた言葉を反復していた。