あきれるくらい側にいて
 
だけど……。


「……っ」

喉元まで出かけた言葉を飲みこんだ。


視線を絡めた目の前の表情に、右手の力も緩んでしまう。


解放された左腕を引いたハルが、一歩程あたしとの間の距離を伸ばし

「…ごめん、なさい」

小さく呟くように言って、足早にフロアを出て行った。


最後に置いていかれたその一言も、さっきの表情だって。

何故そんな言葉を吐いて、どうしてあんな顔をしたのかなんて、わかるはずもないけど。

あたしに腕を掴まれ顔を上げたハルが、無表情の中に一瞬見せた……


「なんで困ったみたいに笑ったのよ…」


たった一瞬だけ笑ったんだ。

それは決して笑顔とは呼べない、胸がキュッと苦しくなるような。

そんなハルの顔だった。

 
 
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