あきれるくらい側にいて

そんなに悪気はないのだと思う。
酔ってるせいだとも思う。

だけど……。

ギュッとこぶしを握りしめると、ずっと黙っていたリンちゃんが静かに訊いてきた。


「サクラさんも、あんなふうに思います?」

「…え?」

「ハル君は高卒だから、所詮出世はできない。だから自分の気持ちにも歯止めをかけたんじゃないですか?」


思ったことがないと言えば嘘になる。高卒だとか年下だとか、時々そんなことを頭に巡らしていた。


「リン、ハル君のことスキです。
あっ 勘違いしないでください! サクラさんがハル君を想う気持ちとは違いますから。
サクラさんのことも大好きですよ。悔しいけど結構憧れてます。アラサーだけどキレイだし、仕事してる時はカッコイイし……でも、」


そこでリンちゃんは、あたしを真っ直ぐに見つめ直した。


「でも、自分自身に正直じゃないサクラさんもハル君も嫌いです。
サクラさん、思ったまま行動することが子供じみてるというなら、大人になるってイヤなことですね?」

「…リンちゃん…」

「『やらずに後悔するより、やって後悔しろ』って、子供の頃言われませんでした?
ホントはもう気づいてるんでしょ? 自分の気持ちに」

< 165 / 200 >

この作品をシェア

pagetop