あきれるくらい側にいて
肩で息をするあたしの背中をモモちゃんが撫でつける。
「まぁまぁ。あの堅物婚約者には黙っておいてあげるから」
「ちょっと決めつけないでよね!
そ、そんなこと絶対にないもん! そうだ。あたし、きっと悪い夢を見たんだ……」
「いいじゃないの、たった一度の過ちくらい。半年経ったら、つまんない結婚生活に浸かって自由が利かなくなるんだから。
それにしても見たかったわねぇ、そんな可愛いコだったなら」
「だから夢だって言ったでしょ!!」
必死に自分自身にも弁解しながら、あたしの心は晴れるどころか乱れていくばかりだった。
頭を抱えても眉間に皺を寄せても、その答えは出てこない。
どうあがいても、抜け落ちた昨夜の記憶は思いだせそうになかった。
そして。
この事件とあの男が、あたしの静寂たる未来に、ビッグウェーブを起こすことになるなんて、この時は当然思いもしなかったんだ ―――。