あきれるくらい側にいて


帰りの電車の中でも悶々としたまま。

本社に戻る違う部署の人達も一緒にいたけど、あたしは敢えて一人で離れた場所に立っていた。

でも、なんとなくそっちの方向に目線を動かす。

“そっち”とは、ちょっとだけ賑やかな固まり。

ちょっとだけウルサい女子社員に挟まれて座る、たじろぎ顔の阿久津 陽。


やっぱり他人の空似ってやつかなぁ……。

もしも、あの時の男だとしたら、あんなポーカーフェイスでいられないだろうし。

だとしたら、あの男は誰だったんだろ……?


ボーッと眺めていたら、不意にこっちを向いた彼と視線がぶつかってしまって、あたしは慌てて目を逸らした。

だけど彼は、両隣に座る女子社員達にペコペコしながら席を立ち、こっちへ向かって歩いてきたんだ。

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