あきれるくらい側にいて
 
「やっと会えました」

彼は最初にそう言った。そして

「ずっと伝えたかったんです」

と続けて

「その節は、ありがとうございました」

と頭を下げた。


「……その節?」

「そうです。
2年前、採用面接を受ける前にガチガチに緊張してたオレを励ましてくれたのがセンパイでした。あの時に声をかけてくれなかったら、今のオレはないです!」


はぁ、2年前ね……。

確か、人手が足りないからって新卒者の採用試験の人員に借りだされたことが過去にあったけど。それが2年前だったかどうかなんて、もう覚えてなんていない。

それにしても、『やっと会えた』って『ずっと伝えたかった』なんて言うから、ほんの一瞬だけどドキッ なんてしちゃったじゃない。

やっぱり彼はあの朝の男で、モモちゃんが言うように一夜を共にしてしまった相手だったら……。

そんな思いと、頬を紅潮させ隣に立っている彼の真っ直ぐな瞳に、なぜか胸がざわついて仕方なかったんだ。

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