あきれるくらい側にいて
 
「あっ もしもしタダシ?」

「……サクラ?」


返ってきたのは、少し疲れたような声。


「あのね、たった今届いたのっ! ねぇ、これってバースデープレゼントだよね?」

「……」


返事がないけど構わずに続けた。


「ロイヤルアッシャーのダイヤなんて高かったんじゃない? ありがとね。あたし、すっごくうれしいよ! ホントにありがとう。
ねぇ、今お家? 何してたの?」


でも、そこで気づいたんだ。電話の向こう側が静かすぎることに。


「ねぇ、タダシ?」

「……あのさ」


やっと聞こえてきた声は、いつもよりトーンが低い。


「悪いけど、いま仕事中なんだよ」

「でも今日は土曜なのに」


ハァーと耳に届いた息遣いの音は、聞き違いでなければ、ため息だ。

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