あきれるくらい側にいて
空腹に注ぐ連打のビールは、いつもより効いて。ラブストーリーがいつの間にかコメディに観えてくる始末だった。
でも4本目に観賞していた映画がラストに近づいてきた頃、あたしは画面を見つめたまま動きを止めた。
目の前に繰り広げられるシーンが、今のあたしには毒だったのかもしれない。
ちょっとチンプで在り来たりだけど、それはそれはロマンティックだったんだ。
年齢的に結婚を焦るヒロインと、そんな心情に気づかない彼氏。
周囲の人間に振り回されたり、時には仲を引き裂きかねない事件的ハプニングが起こり。勘違いからすれ違いに発展し、一時は別離しそうにまでなっていた二人だけど……最後にはちゃんと仲直りをして、彼女の誕生日を祝おうとしてる。
微笑みあう二人の前には、バースデーケーキ。
テーブルの上で手と手を重ね、彼の腕時計を見つめる彼女。
日付が変わろうとする10秒前、静かに彼がカウントダウンを始めて ――。
そこで顔を上げ、側にあった携帯に手を伸ばしたあたし。
暗い室内に点灯したデジタル表示が示した文字は“22:04”だった。