その時まで、三秒。
「片想いが」

「嘘!」

「即答かお前は」

 そんなの嘘。そんな素振りずっと見せなかったじゃない。

「嘘っ!」

 もう一度言えば、強い力で腕を引かれる。あたしは胸の中へと収まった。

「嘘じゃねぇよ。つか嘘吐いてなんになんだよ」

「――……解んない、けど……」

 頭の中が解らない。ぐるぐる巡って、飲み込もうとしない。

「嘘、じゃないなら、す……好きって、こと?」

「ああ。お前は?」

「あたし、は……あたしはぁ」

 ダメだ。更にぐるぐる巡って、もうわけが解らなくなっている。

「――好き、だろ?」

「あぅ……う、うん!」

 大きく頷き、目を瞬かせる。なに、いまなんて言われたんだろうか。

「そうか。ならいい」

 笑みを溢しながら頭を撫でる。なにがそうなのかは解らないけど。

「な、なんだ」

 背中に腕を回して抱きしめる。そうすれば、躯を竦ませた。

「好きっ、大好きっ!」

 あたしは好きって言ってないから。言えば、顔が熱くなった。

 そうしてもう一度重なる唇。数秒間の出来事。

 ここが往来だと気づいたのはその後。周りに人がいなかったのが救いだった。


end.
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