君しか愛せない


「黒澤先生おはようございます!」

「おー。おはよう」

担任の大井が体調不良で休みらしく、代わりに出欠を取るべく名簿を片手に教室へ入る。

「チャイム鳴ったぞ。席つけよ」

「はーい」

教壇の前に立つと騒がしかった室内が一変して静まり返った。

まだクラス全員の名前を覚え切っていない俺は、1人1人顔と名前を一致させながら出席番号順に名前を呼ぶ。

そうして、1人の生徒の名前を見て一瞬動きが止まってしまった。

「木下和樹」

「はい」

こいつか。

小春が面食いなのは知っていたが、やはりというか木下は男の俺から見ても格好いい方だと思う。

そういえば運動神経も良く、体育の授業でも割と目立っていた気がする。

しかしその程度の事では俺に負けたと思わせるには足りず、小春を諦めるための要素には程遠い。

こいつになら安心して小春を任せられるという男が現れてくれたら、いつかこの気持ちも心の奥にしまい込む事ができるのだろうか……。


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