君しか愛せない
第7話 戸惑い
あたしに彼氏が出来てからというもの、どうも2人の様子がおかしい。
滅多に怒らない凌兄はずっと機嫌が悪いみたいだし、葵兄に至ってはなんだかよそよそしい。
妹に彼氏ができたのがそんなに悔しいのか、はたまた相当のシスコンなのかは解らないけど。
「一体なんだってのよ。悔しいなら自分達も彼女作ればいいのに。そーよ、あたしなんかより全然モテるんだから!」
前々から思っていた事だけど、2人ともモテるのに自分から彼女を作ろうとしない。
それでも葵兄一時期女の人の出入りが激しかったけど、それもいつからかぷっつりと無くなったみたいだし。
「まさか・・・」
この間の葵兄の寝言が本当なんてことは・・・。
「ないないないない」
想像しておいて思わずブンブン首を振って否定してしまった。
そりゃあうちのお兄ちゃん達は格好いいと思うけど、そんな風に見たことなんて一度もない。
それはきっと葵兄も同じだと思うし、葵兄くらいのレベルだったらあたしなんかよりもっとレベルの高い女の人を選べる筈。
実際、葵兄が付き合っていたのはあたしなんかよりセクシーで美人で大人っぽい女性ばかりだった。
「なんか・・・自分で言ってて悲しくなってきた・・・」
ブツブツと独り言を言いながら通学路を1人歩いていると、突然後ろから誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。
「小春ちゃん、おはよう。何暗い顔してんの?」
「か、和樹君・・・」
どうやら考えすぎるあまり傍から見てもテンションが落ち込んでいるのがバレてしまったらしい。
「そ、そうかな?気の所為だよッ」
なんだか急に恥ずかしくなり、和樹君にくるりと背を向けると早足で歩き始めた。
その後ろを彼が少し小走りに追いかけてくる。
「待ってよ。あ、小春ちゃんさ、今日の放課後用事ある?」
「んー・・・特にないけど?」
今日は部活もないし、帰ってからも特にやる事もない。
和樹君の方を向き、「何で?」と尋ねた。
「何ってゆーか・・・別に対した用事もないんだけど、ちょっと2人きりで話がしたいなって」
にっこりと微笑む彼につられて顔が綻ぶ。
差し出された手を握りながらあたしは首を縦に振った。