KYOSUKE

俺はその日丸一日眠った。


単に睡眠不足だったのもあったけど、あの二人に生気を吸い取られたせいだ。


その日の夜中に目覚めると、数時間前に戒さんからパソコンにメールが入っていた。


“今から会えるか？”


短い一文だった。俺は慌てて戒さんに電話をした。


携帯での電話やメールは極力避けている。


万一にも龍崎の人間に知られるわけにはいかないから。


どこで誰が聞き耳を立てているか分かったものじゃない。


と言っても、盗み聞きするような無粋なまねをする人たちはここに居ないけれど。


『お久～♪』


電話での明るい声を聞いて、俺はほっと安堵した。


「どこに居てはるんですか？今からそっちへ行きますよって」


お嬢は眠っているはずだ。一時間ぐらいなら抜け出してもバレないはず。


俺は戒さんの居る場所を聞き出し、忍び足で龍崎家を抜け出した。


戒さんは街の２４時間オープンのファミレスでコーヒーを飲んでいた。


店内には大学生ぐらいに男のグループと、カップルが一組だけで、閑散としている。


アルバイトらしきウェイターも暇そうにしている。


「よっ！」戒さんが手を上げ、俺は無言で戒さんの向い側に腰を降ろした。


戒さんが俺を呼び出した理由……


戒さんが龍崎家に来るまで非常事態が発生するまで、外では会わないということを決めていたのに、わざわざ彼が会いに来たのは何故か。




嫌な予感がして、



俺はウェイターにコーヒーを頼むと、無言でタバコの箱を取り出した。