KYOSUKE

戒さんが中学に入った頃、彼はしょっちゅう生傷をこさえて俺の家に来た。


俺の家は鷹雄組の事務所とは離れているため、普通の一軒家だ。


絵本に出てきそうな家。


と戒さんは笑っていた。そして彼の素直な一面が見え隠れして、「羨ましいわ」なんて笑っている顔が、俺は好きだ。


その日も派手に顔に傷を作っていた。


この頃の戒さんは背もまだ低い方だったし、おまけに女の子のような可愛らしい顔をしていたので、その傷が余計に痛々しかった。


「ど、どないしはったんですか、その傷」


「どうもこうもあらへん。兄ちゃんたちにやられたんや」


忌々しそうに戒さんは口を尖らす。


兄弟喧嘩か…


この頃生意気になった戒さんは、二人のお兄さんたちにしょっちゅう苛められて(可愛がられて?)は俺の家に避難…と言うか家出しにきていた。


「原因はなんです?」


戒さんは腕を組むと、至極真剣にくわっと目を開いた。






「冷蔵庫のプリンや」






プリン…


「あいつら俺の大好きな生クリーム入りプリン二人で食いやがったんやで」


プリンでそんな本格的な喧嘩を……


「おい!聞いてるのか!!」なんて言ってチョップされた。


女の子みたいに可愛いのに、口と態度は随分悪い。おまけに手も早い。


俺が額を押さえていると、エプロンをした母さんがにこにこしながらやってきた。


「戒くん。うちでホットケーキ食べていかへん?」


「ホットケーキ!」


戒さんは目を輝かす。


俺は戒さんのこうゆう素直なところが―――好きだった。






< 11 / 257 >

この作品をシェア

pagetop