KYOSUKE
戒さんに会ってから二週間が過ぎた。
真実を聞いても俺はどうすることもできず、ただただ時間だけが過ぎていった。
「キョウスケ!聞いて、聞いて♪」
お嬢はいつも俺にまとわりついてくる。
単に歳が近いせいもあるけど、何でも黙って話を聞いてくれるから話しやすいんだろう。
戒さんと会ってから俺はお嬢の顔を見ると
少しだけ後ろめたい気持ちを覚える。
俺が悪いわけじゃないのに。
もちろん戒さんも。
だけどお嬢の知らない事実を隠し持っていることはやっぱり気分のいいものではない。
「どうされました?」
俺は茶の間の襖を修繕中だった。
この前酔っ払ったイチさん…本名壱衣(イチイ)さんが蹴破って穴が開いたのだ。
本人が直すって言ってたけど、暇だったからやることにした。
「叔父貴がね!来てくれるんだって!」
お嬢は嬉しそうに飛び跳ねている。
本当に嬉しいんだろうな。
こんなに楽しそうに、まるで花が咲いたような明るい笑顔。
俺はその笑顔を見てズキリと心が痛む思いをした。
お嬢のことを好きだと自覚した、あの感覚だったけれど、その痛みは少しも似ていない。
「へぇ。いつお見えになるんですか?」
「今」
お嬢の答えに、俺は色んな意味で焦った。