KYOSUKE
組員の人たちも予想していなかったことみたいで、龍崎会長が玄関口に現れるとみんなそれぞれ玄関に跳び出て行った。
「「「「会長、ごくろうさまでやす」」」
「ごくろう」
この前会った時と変わらない、細身のスーツにきちんと整えた髪。
変わらない威圧感と余裕の笑顔。
その様子を見て俺は戒さんの言ったことが本当なのか疑いたくなった。
「叔父貴!」
お嬢はこの前と同じで、会長の元に駆けつけると彼に飛びついた。
「朔羅。いい子にしてたか?」
会長は俺たちに見せない気を許した優しい笑顔でお嬢に微笑みかけ、お嬢の頭を撫でた。
「いい子だったよ。な、みんな」
お嬢が組員の人たちを眺めると、みんなは揃って顔を歪めた。だけどすぐにいかにも無理やりと言った感じで笑顔を浮かべる。
龍崎会長は俺を見つけると、
「響輔。久しぶりだな。元気だったか?」
とちょっとニヒルに笑みを浮かべた。
会長とウィスキーを飲んだ夜の笑顔に、不変的なものを感じたけれど
もうあのときのように、俺は彼を見ることができなかった。
同じものを返せなかった。