KYOSUKE
「ギャァアアア出たぁ!!」
お嬢が叫びだし、それを合図に組員全員が履いていたスリッパを脱いでそのゴキブリ目掛けて振りかざした。
だけどゴキブリはそんなスリッパ攻撃をなんなくかわし、壁と床の隙間にササッと逃げこんだ。
龍崎会長を見ると顔を真っ青にさせて、目を開いている。
もしかして―――
いやもしかしなくても、ゴキブリが苦手??
お嬢はそんな会長に涙目になってすがり付いている。
二人ともまるで石のように固まっていた。
「な、なんっであの野郎は俺の前を横切るんだ!そもそも何であんな生き物が存在するんだ!」
両手をわなわなと震わせて、会長は唸った。
眉間に皺を寄せて、切れ長の目は血管が浮き上がりそうなほどくっきりと血走っている。
その顔で唸らないでください。ホントに怖い……
まさかと思うけど―――
俺はスリッパを戻しているタクさんの方をちらっと伺った。
空中で目が合い、タクさんはぶんぶん首を振っている。
「俺じゃない!」と必死に目が語っていた。
まぁちょっと考えてみれば、タクさんが会長にそんな命知らずなことをする筈がない。
って言うことはホンモノか…
確かにゴキブリが大丈夫って人は居ないだろうけど、お嬢と会長の怖がり方(?)はちょっと異常だ。
―――やっぱり似てるな。