KYOSUKE
「野郎どもは魚より肉派なんだよな。魚は栄養あるのによぉ。キョウスケがそう言ってくれると作り甲斐があるぜ」
ドキドキして顔が熱くなるのを感じ、俺は慌てて俯いた。
「お嬢の料理は何でもうまいですよ。若いのに凄いです」
「そう?」
お嬢はキョトンとして、目をまばたいていたものの、すぐにはにかんだような照れ笑いを浮かべた。
「んじゃ今日はアジで決まり!」
ご機嫌に言うとお嬢は俺の前を歩き出した。
その後を俺はゆっくりとした足取りでカートを引いて歩いていく。
なんかこうしてると……
俺たち新婚夫婦のようじゃない??
なんて、厚かましくも思ってしまう。
スーパーの中を一緒に歩くだけのことでも、俺にとってはすごく幸せなことで、初めての感覚だった。
このほんの小さな幸せを
忘れたくない。
この先、俺とお嬢の未来にこんな光景が二度と訪れないと分かりきっていても
俺は小さな望みを
捨てきれないんだ。