KYOSUKE


たっぷり買い物をして、両手にビニール袋を提げていると、お嬢がその一つをひょいと取り上げた。


「え?重いですよ。俺、持ちます」


女の子に重い荷物を持たせるのは、俺の中でなしだ。


好きとか、そうじゃないとか。そうゆうのを抜きに。


だがお嬢はその荷物を軽々持って、


「両手塞がってると食えないじゃん」


と言って、俺の前にアイスの袋をずいと出した。


「え?いつの間に…」


「さっき♪キョウスケが食材を袋に詰めてくれてる間」


あ、そう言えば…一瞬、どこかに消えた気が……


トイレにでも行ったのかと思って、黙ってたけど。


「買い物付き合ってくれたお礼♪今日はサンキュな」


スイカ味のアイス……


いつだったか、戒さんも俺にスイカ味のアイスキャンディーを俺にくれた。


「スイカ…、好きなんですか?」


「うん?好きだよ。でもいちごの方がもっと好きかな」


いちご……雰囲気だけだったら甘い、(←結構失礼)お嬢にぴったりだ。


「やっぱ夏と言ったらアイスだよなぁ」


お嬢は歩きならが、おいしそうにアイスを舐める。


俺もパッケージを破ってそのアイスに口に含んだ。


思った以上に冷たい味を舌に感じて、熱かった体温を少しだけ冷ましてくれた気がする。


大きな道路の歩道橋に差し掛かり、俺たちは並んで階段を昇った。





何気なく隣を見ると、お嬢の白い横顔が目に入る。






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