KYOSUKE
「さぁ、うまいかどうかは分かりませんが。比べたこともないので」
俺の答えに戒さんはにんまり。
「やっぱあるんやな。チュー」
しまった…
俺としたことが、簡単な誘導尋問に引っかかってしまった。
「どこでしたん!?どないなタイミングで?」
戒さんはワクワクと聞いてくる。
こうなったら逃げるには不可能。俺は大人しく観念した。
「どこでって……学校の帰り道。同じ委員会で遅なったクラスの女の子を送ってったとき…」
「そぅなんや~♪」
いいこと聞いた♪と戒さんは、顔にぱっと笑顔を浮かべる。
「俺もさぁ。こないだした。相手はクラスでいっちばん可愛い子」
「へ、へぇ」
何て答えて良いやら。
ってか、マセガキめ。キミはまだ中一でしょ??
「なんかぁ、放課後呼び出されてな、告られてん。そんでなんか良い雰囲気だったからいっちょかましたろかーなんて思うて」
「はあ…」
「でもな」
戒さんは折りたたみのテーブル越しに、ずいと顔を近づけてきた。
少女のような整った顔に、一瞬ドキリとする。
長い睫を瞬かせながら、戒さんは真剣な目をして俺を見ると、
「ドキドキせぇへんかったのや」
と一言。