KYOSUKE
頭上に上がった太陽の光りを受けて、お嬢の顔をより明るく照らし出している。
白いこめかみから一粒の汗が浮き上がり、きらきらと輝いていた。
あ……きれいだな……
この一瞬そう思って、俺は思わず脚を止めた。
お嬢の人形のような横顔に、だけど確実に人間の女の美しさを滲ませたその顔に
俺は一瞬、見惚れた。
道路の上に架かった橋に、今は俺たち以外誰もいない。
まるで下界と隔離されて、二人だけの空間に居る気がした。
下を通る車はかなりの渋滞でぎっしりと詰まっていたが、灼熱の太陽と地面から湧き上がる熱気がその光景をぼんやりと滲ませていた。
だからかな、俺の目にその様子が虚像に見えたんだ。
偽ものの世界。
造りものの現実。
俺たちの出逢いは最初からしくまれた―――偶然だった。
だけど、お嬢とここに居るのは確かな現実で、それだけは唯一変わらない事実だ。
「どした?疲れたか?」
お嬢も脚を止め、振り返る。
その瞬間、長い髪の先がふわりと揺れ、あの甘い香りが俺の鼻の下まで届いた。
チェリーブロッサムだ。
朔羅―――
「お嬢……」
俺は少し先で立ち止まっているお嬢を見つめた。