KYOSUKE
ほっと安堵するのも束の間、
「待ちやがれっ!」
お嬢の怒鳴り声が聞こえて、お嬢はトラックの荷台からまた飛び上がり、今度は走り去ろうとしている原付に向かって飛び込んでいった。
「お嬢!!」
俺は歩道橋の上で叫ぶと、引ったくり犯…原付に二人乗りをしていた運転手の方が、びっくりして俺を見上げてきた。
お嬢はその一瞬の隙をついて、豪快とも言える回し蹴りを、後部座席のひったくり犯の後頭部に喰らわせた。
一寸の乱れもない、鮮やかな脚の動き。
かなりのスピードと命中率だ。
戒さんと同じぐらいか…もしかして……
俺はごくりと喉を鳴らした。
「てめぇ!何するんだっ!!」
運転手も慌てて、振り返りお嬢に殴りかかろうとするが、お嬢はそれをあっさり避けて、
どこにそんな力があるのか、犯人の胸座を掴みあげると、そのまますぐ隣に止まっている車目掛けて、そのまま頭からぶつけた。
ガシャンッ!!
窓ガラスの割れる音が響いた。
ぅわ…痛そう……
じゃなくて!
俺は荷物を持って慌てて歩道橋を降りると、犯人にバッグを引ったくられる際に転んで怪我をしたおばあさんを助け起こした。
「大丈夫ですか?」と一言声を掛けると、おばあさんは弱々しく俺にすがりついてきた。