KYOSUKE
先を急ぐ原付は排気量こそ、このバイクには比べようもないぐらい少ないものの、それでも小回りが利く分、すいすい車の脇を抜けて行く。
「ちっ。ちょこまかと」
俺は舌打ちすると、脚を使ってバイクを回転させ車体をユーターンさせた。
そのままできるだけのエンジンを空吹きして、前輪を浮かすようにハンドルを持ち上げる。
ブォン!
耳に心地いいエンジン音を聞いて、俺は前輪を浮かせたまま勢いよくスロットルを回した。
前輪を持ち上げたままバイクが走り出し、勢いを付けたバイクをガードレールに飛び上がらせると、俺はそのままガードレールの上を突っ走らせる。
(※道路交通法違反です。危険ですので皆様は絶対に真似しないでくださいね(≧≦))
道行く人が唖然として俺を見上げてくる。
中には「映画の撮影!?」なんて言って写メを撮ってる人も居た。
俺はそれらの視線をすべて無視しちらりと車道を見ると、見覚えのある原付はちょうど大きな交差点の赤信号を突っ切ろうとしていた。
原付は車の間を蛇行運転していたから、直進してきた俺の方が早かったわけだ。
俺はタイヤの向きを変えると、そのままバイクごと飛び上がり、タイヤを滑らせるようにして車体を傾け、その原付の前に飛び出した。
原付の男が俺を視界に入れると、慌てて急ブレーキをかける。
キキーーー!!
と派手な音を立てて原付は何とか止まる。
「待ちいや。赤信号は止まれて、習わんかったか」
俺が声を低めて睨みを利かすと、
顔に驚愕の表情を浮かべ、そしてすぐに青ざめると今度は原付を置いて逃げ出そうとした。
ちっ。往生際の悪い奴だ。
もう一度舌打ちして、俺はバイクから飛び上がった。