KYOSUKE
えっと……
これは何て答えるべきなのか。
「俺のチューの仕方が下手なんかなぁ。吾郎なんてドキドキし過ぎて死にそうになった言うてたんやで」
誰やねん、吾郎……
「まぁ人それぞれですし、気にしない方がええんじゃないですか?俺かて、そうドキドキしぃひんかったですしね」
「んじゃお前は下手なんや!」
イシシと戒さんは笑った。
何か……無性にイラっとくる。
俺はバイクの雑誌を脇に退けると、戒さんを真正面から見据えた。
彼の形の良い顎に手をかけ、目を細める。
「ほな、試してみます?」
俺の言葉に戒さんは、一瞬目を開いたものすぐにバツが悪そうに眉をしかめた。
「あかん。ドキドキしてきた」
「は?」
「堪忍え。俺が悪かったさかい」
俺は彼の顎から手を退けた。
「響ちゃんが怒ったん見たの、久しぶりやわ。恐ろしいて、ドキドキするっちゅうねん」
俺は……
あからさまな怒気を露にしていない。だけど、彼にはすぐに俺がちょっと苛立ってるってことを見抜いた。
思えば、昔から戒さんだけだったな。
俺の乏しい感情を敏感に感じ取るのは―――