KYOSUKE

えっと……


これは何て答えるべきなのか。


「俺のチューの仕方が下手なんかなぁ。吾郎なんてドキドキし過ぎて死にそうになった言うてたんやで」


誰やねん、吾郎……


「まぁ人それぞれですし、気にしない方がええんじゃないですか?俺かて、そうドキドキしぃひんかったですしね」


「んじゃお前は下手なんや!」


イシシと戒さんは笑った。


何か……無性にイラっとくる。


俺はバイクの雑誌を脇に退けると、戒さんを真正面から見据えた。


彼の形の良い顎に手をかけ、目を細める。





「ほな、試してみます?」





俺の言葉に戒さんは、一瞬目を開いたものすぐにバツが悪そうに眉をしかめた。


「あかん。ドキドキしてきた」


「は?」


「堪忍え。俺が悪かったさかい」


俺は彼の顎から手を退けた。


「響ちゃんが怒ったん見たの、久しぶりやわ。恐ろしいて、ドキドキするっちゅうねん」


俺は……


あからさまな怒気を露にしていない。だけど、彼にはすぐに俺がちょっと苛立ってるってことを見抜いた。


思えば、昔から戒さんだけだったな。





俺の乏しい感情を敏感に感じ取るのは―――





< 14 / 257 >

この作品をシェア

pagetop