KYOSUKE


前に一度聞いたことがある。


彼氏が居たことはなかったのか、と。


するとお嬢はあからさまに顔を真っ赤にして、「いねぇよ!」なんて言ってたっけ。


ってことは当然キスもまだなわけで…


って、俺ヤバイな……


変なことばっかり想像してる。


だけどお嬢の最初は全部戒さんが奪うわけで―――


それを考えると俺の中にどうしようもない、怒りが湧き起こった。





俺の中で獰猛な鷹が大きな翼を広げて、激しい羽ばたきを繰り返す


そんな音が聞こえる。


それは単なる気持ちの問題でしかないのに、酷くリアルで気持ちの悪いものだった。





それが嫉妬と独占欲だと気づくには―――そう時間がかからなかった。






―――……


「わ、わりぃ。ちょっとふざけただけだからさっ」


とイチさんの慌てる声がして俺は、はっとなった。


俺…今どんな顔していた?


「キョウスケが怒ったの始めて見たぜ。おめえ案外ヤクザに向いてるかもな。人をビビらせるにはもってこいだ」


タクさんがわざとチャラけて、へらっと笑う。


俺はそれに何も返すことができなかった。




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