KYOSUKE
「河野さん?」
俺の声に、大きな目に涙を溜めた河野さんが顔を上げた。
「鷹雄くん!」
河野さんは俺を見るとあからさまにほっと安堵して、ちょっとだけ緊張を抜いたようだった。
「何だよお前!」
俺よりちょっと上…って言っても同じ大学生だろうな、男が怒鳴り声を上げた。少し長めの髪を明るい茶色に染め上げて、顔も頭も軽そうだ。
「彼女俺の知り合いや。彼女をどないするつもりや?」
俺はちょっとドスを含ませて男を睨んだ。
男が一瞬たじろいだように怯む。
「何だよお前。こいつの男か?お前彼氏居ないって言ったよな!」バツが悪そうに顔を歪めると、男がぐいと河野さんの腕を引っ張る。
河野さんが痛そうに表情を歪めた。
「彼氏やない。けど知り合いや。女に乱暴するのはやめぇや。かっこ悪いで」
「何だよ、かっこつけやがって!でもお前こいつの男じゃなきゃ俺がどうしたっていいだろ!」
ぐいっと河野さんの腕を引っ張り、男は河野さんを乱暴に抱き寄せた。
俺はバイクから降りると、スタンドを降ろし車体を固定すると、男の元へ歩いていった。
近づくと俺より上背があることが分かる。たぶん180以上あるな…
龍崎会長よりは低いと思うケド。いやあの人の場合身に纏う雰囲気から大きく見えるのかな…
今はそんなことどうでもいいけど。
たぶん男もそれを強みに思ってるのだろう。
体型も男より俺の方が細いし。男は勝ち誇ったように「ふふん」と口元に下品な笑みを浮かべた。
俺は河野さんの腕を握っている男の腕に手を伸ばした。