KYOSUKE
俺の指に挟んだタバコが傾いて抜け落ちそうになったところを、俺は慌てて持ち直した。
「俺、ヤクザやのに??」
俺の問いかけに河野さんは恥ずかしそうに笑った。
「最初はホントにびっくりして。でも考えたら鷹雄くんはいつもかわらず優しいし」
「優しいかなぁ」
「うん、優しいよ。あたしが重い資料を抱えてるとさりげなく持ってくれるし、レポートで分からないところがあっても鬱陶しがらずに、ちゃんと教えてくれる。
ゼミの発表のときも遅くまで残って、資料集めしてくれるし、高いところのものを何も言わずに取ってくれる」
河野さんの言葉を聞きながら、俺は思わず苦笑を漏らした。
「そんなん当たり前やん。他の男だって同じようにしてるよ」
小さくなったタバコの灰をグラスに落とすと、俺は薄く水を張ったグラスに吸殻を落としいれた。
それを物珍しそうに眺めながら河野さんは口を開く。
「周りの男の子も親切だけど…やたらと煩いし……なんて言うのかな…下心がありそうで」
ああ、まぁそれはあるかもな。
「でもそれは河野さんを好きやからやないの?」
「そうかもしれないけど、あからさまな態度が……あたしが見るに堪えない女だったらそうはしないと思うと、何か気分が悪くて。
その点鷹雄くんの態度見てると他の女の子たちにも平等に優しいし、変な下心とか感じられなかった。純粋にこの人優しいんだ、って思って」
河野さんはグラスから目を離すと、視線をゆっくりと俺に上げた。
「鷹雄くん全然喋らないし、淡々としてるけど言うこと的を射てるし、
話を聞いてなさそうなのに、話題を振るとどんな小さなことでも答えてくれるし]
話聞いて無さそうって……まぁ半分は当たってるけど。
(戒さんの話を俺はいつも話半分で聞き流してるとことはある)
「いつの間にかあなたの一挙一動があたしの中で大きくなって、
ほんの些細なことで悲しくなったり、小さなことですごく嬉しくなったり―――」
いつの間にかすごく好きになってた。
彼女はそう言って会話を締めくくった。