KYOSUKE


俺はちょっとびっくりして目を開いた。


「え……?思い出て?」


彼女が何を指して思い出と言ってるのか分かっていたけど、思わず聞いてしまった。


すると彼女は赤くなった顔を俯けて、震える声を搾り出した。





「一晩だけでもいいの……鷹雄くんには迷惑をかけない。付き合ってなんて図々しいこと言わない。


鷹雄くんの好きな人にあたしを重ねてもらってもいい。



だからあたしを………」






それ以上は言葉にならなかった。


語尾が消え入りそうなほど震えていて、手も顔も真っ赤だ。





どうしてそのときそう思ったのだろう。


彼女はお嬢に全然似ていない。


彼女をお嬢に重ねることなんてできない。





だけどこのときの必死な様子の彼女が







すごく可愛く見えたんだ。








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