KYOSUKE
だけど俺はお嬢を―――
俺は繋いだ手を離そうとした。
指がすり抜ける感触を感じた河野さんが、慌てて繋ぎとめようと強く握り返してきた。
予想外の力強さに、俺はただただ目を開いた。
「…………お願い…」
小さく言った言葉は震えていたけれど、どこか決意と覚悟を決めたような力強さを秘めている。
俺は彼女の瞳の奥底にある、小さな輝きを見た。
『キョウスケ』
俺を呼ぶあのひばりような声。
『キョウスケ、見てっ♪』
新しい洋服を買うと、お嬢は俺の前(って言うか組員の人たち全員に回ってる)でファッションショーをしてくれる。
『可愛い?』
照れくさそうに笑うお嬢。
太陽のような笑顔。
「可愛いよ」
忘れたい。
一瞬だけでもいいから、
忘れさせて?