KYOSUKE
河野 桜子―――
それが彼女の名前だ。
お嬢の名前と酷似していたのは偶然だったけど、だから俺は彼女を抱く気になったのだろうか。
やっぱり俺は河野さんにお嬢を重ねてるのだろうか……
河野さんの名前を呼ぶと、彼女は切なそうに眉を寄せて俺の首に手を回してきた。
「鷹雄くん、あたしの名前知ってたんだね」
彼女の言葉に俺はちょっと苦笑を漏らした。
「当たり前やん。ゼミに入るとき自己紹介したし」
「だけど名乗ったのはその一度だけだよ?」
「一度で充分やん」
重ねてる―――かもしれないけれど、今だけは違うと思いたい。
ちょっと笑って、そんな彼女を抱きかえし、俺たちはベッドの上に崩れた。
―――――
――
狭いシングルベッドに二人横になって、俺はぼんやりと天井を見つめた。
さっき時間を確認したら、夜中の3時過ぎだった。
実に二時間もかけてことに及んだのはこれが初めてだ。
体力的…というよりも精神的にぐったりと疲れていた。
気が抜けたって言うのかな…しばらく動けそうにない。
隣では違う意味で動けそうのない河野さんが俺のすぐ傍で、やはり同じように天井を見上げていた。
「大丈夫?」
俺が僅かに顔を横に向け、彼女の白い横顔を見つめると、彼女ははにかんだようにちょっと笑顔を返してくれた。
「……うん。大丈夫…でも」
「でも?」
「想像以上に痛かった……」
河野さんは恥ずかしそうに枕に顔を埋めた。
俺はバツが悪そうに顔をしかめると
「ほんまにすんまへん」と小さく謝った。