KYOSUKE


「こんなに痛いのなんて、好きな人じゃなかったら絶対いやだよ」


痛みも思い出……


彼女は小さく言って微笑んだ。


俺はそんな河野さんをそっと抱きしめた。


彼女の華奢な肩が震えて、それでも俺にしがみついてくる。




「鷹雄くん………




ありがとね」






俺の腕の中で彼女は小さく言い、そしてそっと目を閉じた。




ありがとうなんて言われる筋合いはない。


俺は自分の為に…この行き場のない気持ちを一瞬だけ忘れたくて彼女を抱いた。


そんなこと勘のいい河野さんだったら、気づいているはずなのに




でもお陰でお嬢のことは、



最中には一瞬も浮かんでこなかった。





「河野さん。ほんまに




ごめんな」





彼女の気持ちに小さく謝ると、彼女は俺の腕の中で寝息を立てていた。


でも俺の腕の中で、何か冷たいものが流れ落ちるを感じて



それが河野さんの涙であることを




俺は気づいた。







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