KYOSUKE
ちゃんとお嬢の言いつけ通りパックの牛乳を買って龍崎家に戻ると、お嬢は出かけたあとだった。
友達と遊びに行くと言っていたらしい。
この前みたいにお説教が待っているのかと思い、何となく足取りの重い気持ちで帰路についたわけだから、何だか拍子抜けしつつも、お嬢の顔をすぐに見なくてちょっとほっとした。
「おうっ!キョウスケ。門限破りの次は無断外泊かぁ?おめぇは見るからに優等生っぽいのに、意外と不真面目だよな」
とタクさんとイチさんがにやにや。
俺はそんな二人を無表情で見上げると、牛乳の入ったビニール袋を彼らに押し付けた。
「脱、童貞」
なんて意味深な発言をすると、ビニール袋を押し付けられた二人が、
「な、何っ!!おめぇ詳しく話を聞かせろよ♪」
と楽しそうに勢い込んできたけど、俺は彼らに背を向けちょっとだけ舌を出した。
んなわけあるかい。童貞じゃないっつの。
なんて心の中で悪態をつきながらも、俺は自室に引っ込んだ。
でも……
あの二人をからかうのは結構楽しいんだ。
まるで古くからの友人であるように、俺は彼らに気を許していた。
だからこんな冗談も言えるわけで。
それでも俺はこの人たちに―――秘密を抱えている。
―――
そしてまた平凡な日々が訪れると思いきや…
またも事件…じゃないな、そんな大げさなものじゃないし…
とにかく、ある出来事があって、ひょんなことから俺は彼女の忌まわしい過去を
知ることになる。