KYOSUKE
俺が無断外泊したその二日後、バイトに行こうと茶の間を通ったとき
お嬢が床に倒れこんでいるのを発見して、俺は一瞬息を飲み込んだ。
お嬢は顔色を蒼白にさせ、うつぶせに倒れていた。
体を折り曲げ、おなかを抱えるようにして小さく唸り声をあげている。
茶の間はいつも煩いぐらい人が集まって居るのに、こんなときだけ人の気配がなかった。
「お嬢!」
俺が駆け寄ると、苦しそうに眉を寄せてうっすらと目を開けた。
お嬢の白い額やこめかみからうっすらと脂汗が浮かんでいる。
「どうしたんですか!」
「お……」
俺がお嬢を少しだけ抱き起こすと、お嬢は震える手で俺のTシャツを握り返してきた。
「お?」
「おなか………」
震える声でおなかを押さえ、苦しそうにぎゅっと目を閉じる。
「おなかが痛いんですか!?き、救急車!」
この痛がりようは尋常じゃない。盲腸だったら大変だ。
だけどお嬢は慌てて立ち上がろうとした俺の袖をぎゅっと握って、それを阻止した。
「ちがっ……せ……」
「せ?」
苦しそうに喘ぎながら、お嬢は肩で息をすると
「生理痛……」と言って、ちょっと顔を赤らめた。