KYOSUKE


いや、しませんよ。俺だって命が惜しいし。


なんて答えると、『それもそうだな』なんてタクさんはまたも笑った。


そんなわけで通話を終えると、俺は茶の間に戻った。


お嬢はさっきより少し落ち着いたみたいだけど、まだ苦しそうに顔を歪めている。


「お嬢…大丈夫ですか?」


彼女の元に屈みこみ、そっと顔色を窺うと、お嬢は俺の手を握ってきた。


汗をかいているはずなのに、その手は妙に冷たかった。




不意打ちに…ドキリと心臓が鳴る。




「お嬢……?」


「バファリンの半分は……優しさでできてるのデス…」


お嬢は目を閉じると、途切れ途切れに言った。


「はぁ」


そう言えばあったね。そう言うCMが。


お嬢は俺の手を握る力を少しだけ強めた。


「おめぇ…バファリンみたいな野郎だな……。何か……ちょっと楽……」


それは……


褒め言葉なのだろうか。


でも俺は人間のオスであって、鎮静剤じゃありませんよ。


そんなことを思ったけれど、お嬢がちょっとだけ頬を緩ませたのを見て、





鎮静剤でもいいか…




この際





なんて思う。







< 178 / 257 >

この作品をシェア

pagetop