KYOSUKE
お嬢は俺の手を強く握ったまま、目を閉じて荒い息遣いを続けている。
俺は心配で……だけど、こうして手を繋いでいられることがやっぱり嬉しくて
複雑な表情を浮かべながらも、彼女の傍らについていた。
それでも20分ほど経ったとき、お嬢はようやく落ち着いたのか、浅い呼吸の中眠りについたようだった。
手を握ったまま、お嬢の寝顔をそっと眺める。
お嬢は白い顔を、さらに白くさせ明らかに顔色が悪かったが、寝顔は安らかで穏やかだった。
長い睫が白い頬に影を落としていて、くっきりとした二重瞼はうっすらとピンク色をしている。
陶器のようなさらさらした額に、茶色い前髪が流れるように滑り落ちていて
―――まるできれいな美術品を眺めているような…気分だった。
いつもはピンク色をしている唇も、このときばかりは色素が薄くなっていたが、ほんの少しだけ開いた口が
妙に現実めいていて―――色っぽい。
そんなお嬢を眺めて、俺は彼女の額に手を伸ばすと、前髪をそっと掻き分けた。
彼女にキスしたかった。
彼女を抱きしめたかった。
彼女に耳元で……この気持ちを伝えたかった―――
「お嬢………」
そっと囁くと、彼女は小さく瞼を震わせて
「………ん」とうわ言のように声を出した。